便潜血検査はどのくらい正確?
感度・特異度を赤羽の専門医が解説
監修:赤羽胃腸肛門クリニック 院長 葛岡 健太郎
まず知っておきたいのは、「陽性=大腸がん」でも、「陰性=大腸がんがない」でもないということです。結果の意味を正しく理解し、必要な精密検査につなげることが大切です。
検査の正確さを示す「感度」と「特異度」
検査の性能を評価するとき、よく使われるのが「感度」と「特異度」という2つの指標です。まずはこの2つを理解しておきましょう。
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感度……大腸がんがある人を、正しく「陽性」と見つけ出せる割合。高いほど「見逃しが少ない」
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特異度……大腸がんがない人を、正しく「陰性」と判定できる割合。高いほど「大腸がんがないのに陽性と出ることが少ない」
ちなみに「陽性的中率」や「発見率」といった指標もありますが、これらは検査を受ける集団に病気の人がどれだけ多いかで大きく変わります。検査の性能を比較するときには、感度・特異度がよく用いられますが、これらも検査方法や対象者によって変わるため、一定の数値ではありません。
また、便潜血検査が調べるのは、がんそのものではなく便に混じった血液です。痔や腸の炎症などでも陽性になることがあり、大腸がんが見つからなかったからといって、検査が血液を誤って検出したとは限りません。
なお、日本の大腸がん検診では、人の血液に反応する「免疫法(FIT)」が標準的に使われています。そのため、ここでは免疫法の成績についてご紹介します。
便潜血検査(2日法)の正確さ
日本で基本とされる「2日法」(2日分の便を調べる方法)の成績を見てみましょう。
大腸がんに対して
『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』で紹介されている国内外の主な研究では、2日法の大腸がんに対する感度は53〜100%、特異度は87〜95%と報告されています。[1]
研究によって幅がありますが、日本の住民を対象としたある研究では、感度83%、特異度96%という結果でした。[1]これは「大腸がんがある人の約83%が陽性になる」という意味であり、「陽性の人の83%に大腸がんがある」という意味ではありません。
数値に幅があるのは、陽性と判定する血液量の基準や、対象者、病変の特徴などが研究ごとに異なるためです。ここに示した成績は研究で得られた値で、すべての検査施設や個人にそのまま当てはまるものではありません。
採取する日数による違い
便潜血検査は、何日分を調べるかによって成績が変わります。前述した日本の住民ベースの研究では、次のような結果が報告されています。[1]
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1日法……感度56%、特異度97%
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2日法……感度83%、特異度96%
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3日法……感度89%、特異度94%
この研究では、日数を増やすほど感度(見つける力)は上がりますが、特異度(大腸がんがない人を陰性と判定する力)はやや下がる傾向がみられました。
大腸がんやポリープは毎日出血するとは限らないため、別の日の便を調べることには意味があります。日本の大腸がん検診では、2日法が標準です。[2]
2日分のうち1日分だけでも陽性なら、精密検査が必要です。便潜血検査をやり直して陰性になっても、最初の陽性を取り消すことはできません。痔がある方も自己判断で済ませず、大腸カメラによる精密検査について医師に相談しましょう。[2]
「早期の病変」は見つけにくいことも
便潜血検査は大腸がんの発見に有用ですが、出血の少ない早期のがんや、がんになる前の段階のポリープは、検査で見つからないことがあります。
なかでも、10mm以上の腺腫や、組織の特徴からがん化のリスクが高いと判断される腺腫は、注意が必要な病変です。腺腫は大腸ポリープの一種ですが、すべてのポリープががんになるわけではありません。
同ガイドラインでは、こうした注意が必要な腺腫などの病変について、2日法の成績として、感度29.2%、特異度85.8%という報告が紹介されています。[1]この値は、すべてのポリープや早期がん全体に対する検出率ではありません。つまり、便潜血検査だけでは、がんになる前の段階のポリープの多くは拾いきれないのです。
このことは、便潜血検査が陰性でも、「大腸に病変がない」とは言い切れないことを意味します。ポリープの段階から詳しく調べたい場合には、大腸の中を直接観察できる大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が有用です。
ただし、大腸カメラもすべての病変を必ず発見できるわけではなく、まれに出血や腸に穴が開くなどの合併症が起こることがあります。検査の必要性や時期は、症状、年齢、ご家族の病歴、過去の検査結果などを踏まえて相談します。
血便、続く腹痛、便通の変化などがある場合は、便潜血検査が陰性でも受診してください。症状がなく検診で異常を指摘されなかった方も、定期的な検診を続けることが大切です。日本では、40歳以上の方に年1回の大腸がん検診が勧められています。[2]
- 検査の正確さは「感度(見逃しの少なさ)」と「特異度(大腸がんがない人を陰性と判定する割合)」で評価する
- 日本の大腸がん検診では免疫法(FIT)が標準的に使われている
- 2日法の大腸がんに対する感度は53〜100%、特異度は87〜95%という報告があるが、研究条件によって異なる
- 「2日法」が基本。1日分でも陽性なら精密検査が必要
- がんになる前のポリープは便潜血検査では見つけにくい。陰性でも症状があれば受診する
- ポリープの段階から詳しく調べたい場合は、大腸カメラが有用。必要性や時期は医師と相談する
[1]日本消化器病学会(編):大腸ポリープ診療ガイドライン2020 改訂第2版.南江堂,2020.BQ 2-2・BQ 2-3(学会公開版)
[2]国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」.2026年10月27日閲覧.
お気軽にご相談ください
便潜血検査は、手軽で有用な検査ですが、万能ではありません。赤羽胃腸肛門クリニックでは、便潜血検査の結果やお腹の症状を踏まえ、大腸カメラの必要性をご説明します。「陽性と言われたけれど、どうしたらよいかわからない」「陰性でも気になる症状がある」という方は、お気軽にご相談ください。
