痔瘻(じろう)の治療法
手術の種類と選び方を専門医が解説
監修:赤羽胃腸肛門クリニック 院長 葛岡 健太郎
まず膿がたまっている段階(肛門周囲膿瘍)の治療
痔瘻になる前の「肛門周囲膿瘍(膿がたまっている状態)」の段階では、まず切開して膿を出す(排膿)処置を速やかに行います。抗生物質(抗菌薬)は一般的にはあまり効果が期待できず、この段階で根治的な手術をしようとすると、肛門を締める筋肉(括約筋)を傷つけて便失禁などのリスクが高まるため、まずは「膿を出す」ことを優先します。
痔瘻の手術の種類
痔瘻の根治には手術が必要です。病変の形や場所・括約筋への影響を考慮して術式を選びます。
膿の通り道(瘻管)を原発口から皮膚の出口まで切り開く方法です。比較的浅い場所にある痔瘻(皮下痔瘻・低位筋間痔瘻)に適しています。根治性が高く、再発が少ない術式です。
肛門を締める筋肉(括約筋)をできるだけ傷つけずに治す術式です。肛門の前側方にある痔瘻や、もともと括約筋の機能が低下している方に適しています。「くり抜き法」とも呼ばれます。
膿の通り道にゴム糸などのひも(シートン)を通して、少しずつ縛ることで時間をかけてゆっくりと切開していく方法です。括約筋への負担を分散させることで、変形や便失禁のリスクを抑えながら治療できます。
内外の括約筋の間から瘻管にアクセスし、内肛門括約筋側で瘻管を縛って切除する術式です。括約筋を傷つけるリスクが低く近年注目されている方法ですが、再発率がやや高い点が課題です。
膿の入り口(原発口)とその周囲を切除し、その部分を腸の粘膜などを使って覆う方法です。括約筋への侵襲が少なく複雑な痔瘻にも対応できますが、再開通や再発の課題が残っています。
高い位置にある痔瘻(高位筋間痔瘻)や、肛門の両側に広がる馬蹄形痔瘻など、複雑なケースでは手術前にMRI検査で管の走行を確認したうえで、専門的な術式が選択されます。
手術の方法はなぜ1つじゃないの?
痔瘻の形はとても多様です。浅い場所にあるものから、括約筋を複雑に巻き込むものまであります。「いかに根治するか」と同時に「いかに括約筋を守るか」のバランスが、術式選択のポイントです。専門医による丁寧な術前診断と、患者さんの状態に合わせた術式の選択がとても重要になります。
放置するとどうなるの?
痔瘻を放置すると、膿の通り道が枝分かれし複雑に広がったり、繰り返す炎症によって周囲の組織が硬くなったりします。また、非常にまれですが、長期間放置すると痔瘻がんと呼ばれる悪性化のリスクもゼロではありません。症状に気づいたら早めに受診することが大切です。
膿が出たり腫れが繰り返す場合は、痔瘻が進行しているサインです。放置すると病変が複雑化し、治療が難しくなることがあります。早めに専門医へご相談ください。
- 痔瘻は自然治癒しないため、基本的には手術が必要です
- 肛門周囲膿瘍は、まず膿を出す処置を行い、その後根治手術を行います
- 手術の種類は病変の位置・深さ・括約筋への影響で決まります
- MRIなどで術前に十分な評価を行うことが大切です
- 放置すると病変が複雑化・悪化するため、早めの受診が重要です
日本大腸肛門病学会(編):肛門疾患・直腸脱(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン 2020年版 改訂第2版.南江堂,2020.
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