専門医の考える「痔の治療」

痔の治療で大切なのは、「手術ありき」ではないということです。実際に約8割の患者様は、手術をせずに症状が改善します。北区赤羽にある赤羽胃腸肛門クリニックでは、患者様の症状や生活環境を考慮した上で、最適な治療方法をご提案しています。
3つのポイントで考える痔の治療
手術は「最後の選択肢」
「痔=手術」というわけではありません。多くの場合、生活習慣の改善や薬物療法で症状は改善可能です。ただし、薬を使い続けることが負担になったり、症状が繰り返したりする場合は、手術をご提案することもあります。
治療のタイミングも重要
若いうちに手術を受けた方が、傷の治りが早いうえ、余病がない方が手術に際してのリスクは少ないです。例えば糖尿病を患った方は菌に対する抵抗力が落ち、血をサラサラにする必要のある病気(心筋梗塞や脳梗塞、不整脈等)を患った方は、術後出血や血栓形成のリスクが高くなります。また、これまで出血しなかった痔核が、血がサラサラになる薬を内服したのを契機に出血し始めることもあります。元気なうちに治療を済ませておくことのメリットが大きいと判断した時には手術をおすすめしています。
ただし例外もあり、肛門のまわりに膿が溜まっているときは、その日のうちに手術をします。
それぞれの痔に、それぞれの治療を
いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔ろう)と、痔の種類によって最適な治療方法は異なります。そのため当クリニックでは、デジタル直腸鏡や肛門エコーによる詳しい診断を行い、適切な治療方法をご提案しています。
正確な診断があってこその最適な治療
痔の「見える化」にこだわる理由
当クリニックではデジタル直腸鏡や肛門エコーを使用して、痔の状態を視覚的に確認できるようにしています。なぜなら、特にあな痔(痔ろう)のような複雑な病気は、一般的な診察だけでは正確な診断が難しいからです。
肛門エコーでは、まっすぐな痔ろうから馬蹄型のように複雑に走行するものまで、その形状や深さを正確に把握できます。また膿瘍の位置も正確に特定でき、より安全で確実な処置が可能になります。患者様によってはMRI検査をご案内し、診断をより確かなにしています。
専門医ならではの診断力
肛門の病気は見た目の症状が似ていても、原因や重症度が異なることがあります。例えば出血1つとっても、痔が原因なのか、それとも他の重要な病気が隠れているのかを見極める必要があります。
当クリニックの院長は2,000件以上の手術実績を持つ日本大腸肛門病学会専門医・指導医(Ⅱb:肛門科)、臨床肛門病学会技能認定医・指導医として、より正確な診断を心がけています。
痔の治療
保存療法
痔の治療は、まず痛みや出血などの症状を和らげることから始めます。生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることで、多くの場合は症状が改善します。
生活習慣の改善
- 規則正しい排便習慣:朝食後など、決まった時間でのトイレ習慣をつけることで、便秘を予防します
- 適度な運動:ウォーキングなどの軽い運動で、血行を促進し便通を整えます
- 入浴でのケア:ぬるめのお湯で肛門部を清潔に保ち、血行を改善します
- 長時間の座位を避ける:1時間に1回は立ち上がるなど、肛門への負担を軽減します など
薬物療法
- 軟膏による局所治療:痛みや腫れを抑える成分が配合された軟膏で、直接患部を治療します
- 座薬の使用:肛門内部の炎症や痛みを和らげ、出血を抑える効果があります
- 内服薬の併用:炎症を抑える薬や、痛み止めなどを症状に応じて使用します
- 便通改善薬の使用:便を柔らかくしたり、スムーズな排便を促す薬で、症状の悪化を防いだりします など
日帰り手術~充実の治療メニュー~
当クリニックでは以下のような日帰り手術に対応しています。局所麻酔と静脈麻酔(鎮静剤)を組み合わせることで、苦痛を最小限にする手術を心がけています。
いぼ痔(痔核)の日帰り手術
パオスクレー注射
特殊な薬液を注入していぼ痔(痔核)の血管を固める治療。出血の多いいぼ痔(痔核)に効果的で、日帰りで受けられる比較的痛みの少ない治療です。
ALTA注射療法(ジオン注射療法)
ALTA(硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸注射液)(ジオンⓇ)を痔核に注射をして痔核を硬化縮小させてしまう方法です。切除手術と比べて痛みが少なく、術後出血の心配も少ないので、術後の生活制限は殆どなく、早期の回復が期待できます。ただし、効果は痔核の状態によって様々で納得のいく結果が得られるかどうか不確実な場合もあります。
ゴム輪結紮術
小さないぼ痔(痔核)に対して行う治療で、比較的負担の少ない治療方法です。当クリニックでは術後合併症の観点から現在行っていません。
結紮切除術
脱出したいぼ痔(痔核)を切除する手術です。根本的な治療が可能ですが術後疼痛や術後出血リスクがあります。
ALTA注射療法と結紮切除術の組み合わせ
大きないぼ痔(痔核)は切除し、小さないぼ痔(痔核)には注射で対応。少ない切除でより確実な治療効果を目指します。痔核の日帰り手術に活用されています。
PPH(procedure for prolapse and hemorrhoids)法
特殊な器具でいぼ痔(痔核)を支える粘膜を切除する手術です。粘膜を切除する部分には痛みを感じる神経がないため、術後の痛みが比較的少ないのが特徴です。当クリニックでは術後合併症の観点から現在行っていません。
切れ痔(裂肛)の日帰り手術
側方内括約筋切開術(LSIS)
裂肛の原因とされる肛門括約筋の過度の緊張を取るために、内括約筋の一部を切離して緊張を解除します。肛門ポリープや皮垂などがあれば、同時に切除します。
肛門ポリープ切除
切れ痔(裂肛)に伴うポリープを切除します。
肛門狭窄形成術
慢性化した切れ痔(裂肛)の結果、肛門狭窄をきたした場合に対する手術です。括約筋の一部を切開し狭窄を解除し、裂肛の結果形成された肛門潰瘍や肛門ポリープなどを同時に切除します。このあと、切開した括約筋部分をSliding Skin Graft(皮膚弁移動術)で形成・カバーする方法を行います。
あな痔(痔ろう)の日帰り手術
単純なあな痔(痔ろう)
瘻管を切開し、開放する方法です。確実に治る可能性が高い方法です。肛門後方にある場合に行うことが多いです。
肛門側方や前方に痔瘻がある場合は大きく切開すると術後の変形を来たし、肛門機能が損なわれることがあるため、瘻管をくり抜く、切った括約筋を縫合する、輪ゴムを通すといった方法で治療します。いずれも日帰り手術が可能です。
深いあな痔(痔ろう)や複数箇所ある場合
上記方法で行いますが日帰りでなく、入院手術をおすすめすることもあります。
入院手術のご案内
複雑なあな痔(痔ろう)など、入院での手術が適切と判断した場合は、提携する寺田病院または他院をご紹介します。院長が執刀医として手術を担当することも可能です。これにより、診断から手術、そして術後のフォローまで一貫した治療を提供できます。